たかッ。折角《せっかく》、アナウンサーの換玉《かえだま》に、ひっぱって来たのに……」
 同志は、口々に、喚《わめ》いた。
「射った奴を探せ!」
「同志の顔を、一々調べて見ろ!」
 そこへ、ドタドタと駈けこんで来たものがあった。
「市内に、電灯が点きはじめたぞ。僕たちの放送は、うまく行ったらしい。同志、出て来て見ろ!」
 ワッというと、誰も彼もが、表へとびだした。
 なるほど、今まで暗澹《あんたん》としていた空間に、あちこちと、馴染《なじみ》のある電灯が、輝きだした。電灯が点いてみると、全市を焦土《しょうど》と化してしまったかと思われた火災も案外、局部に限られていることが、判った。
「ラジオが、聞えたぞ」
「電灯も点いたぞ」
 市民は、聞きなれたアナウンサー(だと思った)の声を聞き、母の懐《ふところ》のようになつかしい電灯の光を浴びて俄かに元気をとりかえしたのだった。
 愛宕山《あたごやま》の上では、暴徒の指導者、鬼川が、一人で恐悦《きょうえつ》がっていた。
「見ろ、市民は、うまうま一杯、かつがれてしまったじゃないか。これで、大東京の輪廓《りんかく》が、はっきり浮び上るのだ。米国空軍の目
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