リと、マイクロフォンの前に仆《たお》れたのは、素六だった。
指導者|鬼川《おにかわ》の手にしたピストルの銃口からは、紫煙《しえん》が静かに舞いあがっていた。
「呀《あ》ッ、素六《そろく》、素六。しっかり、おしよ。素六ちゃーん」
鬼川は、断髪女が、仆れた少年を抱いて、大声で呼び戻しているのを見ると、又もや、ズドンと、第二発目を、紅子に向けた。しかし、それは手許《てもと》が狂って当らなかった。
死んだのかと思った素六が、ムクムクと起き上った。
「電灯をつけては、いけない。まだ敵の飛行機は――」
そこまで云うと、素六の頭部は、ガーンとして、何にも聞こえなくなった。保狸口が飛出して、素六を殴りつけたのだった。
そのとき、突然、局内の電灯が、一時に消えた。
「同志、配電盤を、配電盤を……」鬼川の叫ぶ声がした。
携帯電灯の薄明りで、室内が、更《あらた》めて眺めまわされたとき、素六の身体も、紅子の姿も見当らなかった。それに代って、大きな図体の男が、長々と伸びていた。その額からは、絹糸をひっぱり出したような血のあとが認められた。
「誰だッ」
「やッ。保狸口がやられたッ」
「保狸口が、やられ
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