や》下田長造《しもだちょうぞう》の妹娘の紅子と、末子《すえっこ》の中学生、素六とが、一隅《いちぐう》に慄えていることだった。
そもそも、あの善良なる素六《そろく》少年と、モダン娘の紅子《べにこ》とは、一体どうした訳で、こんな一団に加わっているのであろうか。
それについては、空襲下の下町方面《したまちほうめん》の情況について、少しばかり述べて置かねばならない。
G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》の侵入《しんにゅう》
下町方面は、古くから、空襲教練が、たいへん行届いている模範的の区域だった。たびたびの防空演習に、町の人々は、いつも総出で参加した。すこし芝居好きのところは、あったにしても、あれほど熱心に、灯火管制の用意に黒色《こくしょく》電灯カバーを作ったり、押入《おしいれ》を改造して、防毒室を設けたり、配電所に特別のスイッチを設《もう》けたりして、骨身を惜《おし》まないのは、感心にたえなかった。
それが、あの本物の空襲下に曝《さら》されて、どこの区域よりも二三倍がた、混乱ぶりのひどかったことは、まことに意外の出来ごとだった。そのような大混乱の元は、なんであるかというと
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