るで電波で、帝都の在所《ありか》を報らせるようなものですから」
「いいから、用意をし給え」
「それに軍部の命令……」
「もう一度、云って見給え。同盟の一員として判らなければ、物を云わせるぞ、君」
 ルパシカ男は、頑強に反対する一局員の胸元《むなもと》に、短銃の口を、圧しつけた。
 局員は、歯を喰いしばって、大きく肯《うなず》いた。
「承知しました。では皆、命令に従って、放送機のスイッチを入れよう」
 局員は、団員に守られて、機械室の方へ出ていった。
「おや、まだマスクを掛けている人があるじゃないか」団長はギョロリと、眼を光らせた。「もう瓦斯はないから、脱ぎ給え」
 団員は、てんでに、マスクを脱いだ。
 すると、そこには、驚くべき新事実が曝露《ばくろ》したのだった。団員の中には、多数の婦人と、中学生女学生も交っていた。全体として見ても、団員は三十歳どまりの若い者ばかりだった。その中には、互《たがい》に識《し》り合《あ》った者もいた。だが、彼等は、語ることを、団長達の前に、さしひかえなければならなかった。
 更に、驚くべきことは、この一団のうちに、花川戸《はなかわど》の鼻緒問屋《はなおどん
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