せなければならない。そうでないと、世界の平和は来ない。それには、第一に、日本が武装を捨てることだ。私が今、軍服を脱いだように。――で皆さん、僕達同志は、そういう意味に於て、この機会に世に出たのである。雷門《かみなりもん》を中心とし、下谷《したや》、浅草《あさくさ》、本所《ほんじょ》、深川《ふかがわ》の方面では、同志が三万人から出来た。貴方たちも、加盟して戴《いただ》きたい。どうです!」
 局員は、申合わせたように、黙っていた。
「返事がなければ」と、例の男が、たちまち恐ろしい面《おもて》を輝《かがやか》していった。「主義反対と見なしますぞ。われわれが、道々|執《と》って来たと同じ方法により、主義反対の者の解消を要求する」
 キラリと、ルパシカ男の手に、短銃《ピストル》が光った。
「……」
 誰も彼もが、一せいに、両手をあげた。
「それなら、よろしい。はッはッはッ」
 ルパシカ男は、短銃をポケットに収めた。
「では、戦争否定同盟の同志として、新《あら》たに命令する。大至急で、全国放送の用意をして呉れ給え」
 局員は、たじたじとなった。
「帝都の空中襲撃が終るまで、放送するのは危険です。ま
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