る防空飛行隊、高射砲隊によってついにとどめを刺されました。太平洋に逃げたものは、なお追撃中でございますが、これはもう燃料もあまりありませんので、その最期のほどは知れております。とにかく今回の大空襲で、帝都の被害が案外すくなかったのは、平素からの防空訓練の賜《たまもの》であることは明かであります。東京は只今、二、三火災の所はありますが、一体に静穏であります。防護団にあると家庭にあるとを問わず、この防空第一線を死守されました皆様に、衷心《ちゅうしん》から敬意を表して放送を終ります。JOAK」
「あッ!」
旗男はあまりの嬉しさに、しばらくは口もきけなかった。
ああ、ついにS国の日本空襲部隊は、わが防衛軍のため全滅されてしまったのだ。
しかも、空襲の損害は意外に小さいものだという。これを聞いたら、敵国の将兵は口惜し涙にくれるだろう。
それだのに、これは何ということだ……かの自動車に乗って、怪しいことをいいふらしてゆく背広男!
「おお、旗男君。生きていたね」
突然に、旗男の肩を叩いたのは、自転車にのって、坂を駈けおりて来た少年――鍛冶屋の大将の子、兼吉だった。
「ああ、兼ちゃん。君が見
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