空襲警報
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)旗男《はたお》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一体|誰《だれ》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ちょこ[#「ちょこ」に傍点]に
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日本海の夕日
大きな夕日は、きょうも日本海の西の空に落ちかかった。うねりの出て来た海上は、どこもここもキラキラと金色に輝いていた。
「美しいなあ!」
旗男《はたお》少年は、得意の立泳《たちおよぎ》をつづけながら、夕日に向かって挙手の礼をささげた。こんな入日《いりひ》を見るようになってから、もう三日目、いよいよお天気が定まって本当の真夏になったのだ。
「オイ旗男君。沖を向いて、一体|誰《だれ》に敬礼しているんだい」
後から思いがけない声が旗男に呼びかけた。驚いて後をふりむくと、波の間から頑丈なイガ栗坊主の男の顔が、白い歯をむき出して笑っていた。
「ああ……誰かと思ったら、義兄《にい》さん!」
それは義兄《あに》の陸軍中尉|川村国彦《かわむらくにひこ》だった。旗男の長姉《ちょうし》にあたる露子《つゆこ》
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