が嫁《とつ》いでいるのだった。旗男は、東京の中学の二年生で、夏休を、この直江津《なおえつ》の義兄の家でおくるためにきているのだった。
「義兄さんずいぶん家へ帰ってこなかったですね。きょう休暇ですか」
「そうだ。やっとお昼から二十四時間の休暇が出たんだよ。露子がごちそうをこしらえて待っている。迎えかたがた、久しぶりで塩っからい水をなめにきたというわけさ。ハッハッハッ」
「塩っからい水ですって? じゃあ、また海の中で西瓜取《すいかとり》をやりましょうか」
「それが困ったことに、来るとき、西瓜を落してしまったんだよ」
「えッ落したッ? ど、どこへ落したんです。割れちゃったの?」
「ハッハッハッ、割れはしなかったがね。ボチャンと音がして、深いところへ……」
「深いところへって? 流れちゃったんですか」
「流れはしないだろう。綱をつけといたからね。ハッハッハッ」
「綱を……ああわかった。なーんだ、井戸の中へ入れたんでしょう……。また義兄さんに一杯くわされたなァ」
「まだくわせはしないよ。さあ、早く帰ってみんなでくおうじゃないか」
 二人はくるりと向きを変えると、肩をならべて平泳で海岸の方へ泳ぎだ
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