「オイ皆、早く消しにゆけ。防火班、全速力だッ!」
 手近にいた者が駈けだそうとすると、その前に、またつづけさまに三発、ドドドーンと白煙が天に沖《ちゅう》する。
「うわーッ、やられたッ……」
 と鍛冶屋の大将が叫んだと思うと、どうと倒れた。
「おお、担架《たんか》、担架」
「イヤ何、大したことはない」
 大将はムクムクと起き上ってきて手を高くあげた。
「砂だ、砂だ。オイお前は、ホースを引っぱれ。早く早く。落ちついて急げ!」
 防護団はあまりの強襲にあって、頭がカーッとして、何がなんだかわからない。
 手あたり次第、眼にとまった方に駈けだしてゆく。これではいけない。もっと落ちつかねば……と気がついた旗男は、ふと天幕《テント》の中に、赤い房のついたラッパを見つけた。
「そうだ、これだッ」
 旗男は天幕の中にとびこんで、ラッパをつかむより早く、口に当てて、タタタァ……と吹鳴らし始めた。それは勇ましい戦闘ラッパだった。
 タッタ タッタ タッタ タッタ タッタ タッタ
「おお、戦闘ラッパが鳴っている!」
「おお、あれは誰が吹いているのだろう」
 嚠喨《りゅうりょう》たるラッパの音を聞いた人々は
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