。と見る間に、敵の一機も真黒な煙をひいて撃ち落された。
こうした激しい空中戦が、敵の各編隊を迎え、相模湾《さがみわん》上でも、東京湾の上空でも行われた。
口径四十ミリの敵の機関砲は、思いの外すごい力をもっていた。わが戦闘機は、敵に迫る前に、この機関砲の餌食《えじき》となって、何台も何台も撃ちおとされた。
しかし、その間に、敵機の数もまた一台二台とへっていった。勇猛果敢なわが戦闘機は、鯱《しゃち》のように食下って少しも攻撃をゆるめないのだ。上から真逆落《まっさかおと》しに敵機へぶつかって組みあったまま燃落ちるもの――壮烈な空の肉弾戦だ。
敵の陣形はすっかり乱れた。
舵《かじ》をかえして、太平洋の方へ逃出すものがある。のがすものかと追いかける戦闘機、中には逃足を軽くするため、折角《せっかく》積んで来た五トンの爆弾を、へど[#「へど」に傍点]のように海上へ吐き出して行くのもあった。
ただ、各編隊を通じて十機あまりは、雲にまぎれて戦闘の攻撃機をのがれ、東京へ東京へと、呪《のろい》の爆音を近づけつつあったのだ。
しかし、東京の外側を幾重にもとりまく各高射砲陣地が、どうしてこれを見の
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