第七編隊にも特別な命令がくだった。
恐るべき作戦だった。このまま彼等の思い通りに爆撃が行われるとしたら、東京、横浜、川崎の三市は、数時間のうちに死の都となってしまうだろう。
司令官は、第七編隊を率いて進撃しつつ、ニヤリと笑って、
「さあ、これからいよいよ日本帝国を亡ぼし、東洋全土をわがS国植民地とするその最初の斧《おの》をふりおろすのだ。ああ、愉快!」
と、航空地図上の日本本土の横腹に、赤鉛筆で大きな矢印を描き、更に日附と自分のサインを誇らしげに書きいれた。
空中の地獄
空襲して来た敵機隊との最初の空中戦は、銚子《ちょうし》海岸を東へ去ること五十キロの海原の上空で始まった。――志津飛行隊に属する戦闘機隊が、敵の第一編隊を強襲したのだった。……
つづいて、その南方の海面の上空で、谷沢飛行隊と、敵の第二編隊とが出合い、ここでもまた物凄い地獄絵巻がくりひろげられていった。
グワーン、グワーンとうなる敵の機関砲。
ヒューンといなないては宙返りをうち、ダダダダダーンと、敵機にいどみかかるわが防空戦闘機。
あッ、戦闘機が翼をうちもがれて、グルグルまわりながら落ちてゆく
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