二十人。半数は自転車で、他の半数は二本の足で、今にも飛出すばかりに身構えていたのだ。班員はサッと挙手の敬礼をすると、
「さあ、行こう!」
 と叫んで、それぞれの受持区域にむかって、砲弾のように駈けだした。


   防空飛行隊の活躍


 志津《しづ》村の飛行隊は、緊張のてっぺんにあった。
 帝都から、数十キロほどはなれた、この飛行場には、防空飛行隊に属する諸機が、闇のなかに、キチンと鼻をそろえて並んでいた。
 今しも三機の偵察機が、白線の滑走路にそい、戦闘機の前をすりぬけるようにして、爆音勇ましく暗《やみ》の夜空に飛びだした。
 場外に出ると、三機はそれぞれ機首を別々の方向に向けて、互に離れていった。前に出発した三機と合わせて、六機の偵察機の使命は、某方面から入った警報にもとづき、敵機を探しに決死の覚悟でとびだしたのだった。
「まだ、その後の報告はないか」
 と、屋上の司令所にがんばっている隊長は、通信班長の軍曹にたずねた。
「はッ、まだであります」
「遅いなあ。何もわからぬか」
「はッ、さきほど報告いたしましたとおり、敵機らしきものから打ったあやしい無電をちょっと感じましたが、その
前へ 次へ
全99ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング