大事なことを説いたが、いま少年たちは、五人で力を合わしさえすれば、大人がやっとかつげるような重い梯子もらくらくと運べ、大人がやるよりも、遥《はる》かに多くの街灯をはるかにはやく消してあるくことのできるのを知ったのだ。
 帝都にはまったく夜のとばりが下りた。
 そば屋の掛看板にも灯が消えた。町のネオン・サインもついていない。自動車のヘッドライトには、紫と黒との二重の布がかぶせられた。飛行将校の話によると、夜間飛行でもかなり低空にくだってくると、地上で吸っているタバコの火がハッキリと見えることさえあるそうだ。懐中電灯にも、被《おおい》がいる。上から直接見える火は、ことに用心しないといけない。
 午後八時十五分! 突如として、ラジオが鳴りだした。
「東部防衛司令部です。只今警報が発せられる模様であります……」
 昨日から、中内アナウンサーは、おおわらわの奮闘だった。五百万の市民は、このなじみ深いアナウンサーが、いま何を告げようとするのかと、胸おどらせながら、拡声器の前に集ってきた。
「これァ、いよいよS国の超重爆が攻めてきたんですよ」
「さあ、これは大変だ。うちじゃ防毒室の眼張の糊《のり》が
前へ 次へ
全99ページ中66ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング