家の方は女房を防護主任にしてやらせる」
「鉄さんのおかげで、わが防護団は俄然《がぜん》強くなった。さあ、二人で握手しろ」
分団長は、二人の手をとってにぎらせた。
「あッはッはッ」
「大いにやるッ。ハッハッハッハッ」
日没とともに、警報班の灯火管制係の活動は、目に見えて活発になってきた。なかでも鍛冶屋の大将の息子で、いつも少年ながら父親の向鎚《むこうづち》をうっている兼吉《かねきち》は、親ゆずりの忠君愛国の精神にもえ、少年団の先頭にたって、西へ東へと、教えられた通り、定められた街灯を消してまわっていた。少年たちは五人一組となっていたが、持ちものは、長い梯子《はしご》が一つと、高いところに届く竿が二本――それは、先のところが三つまたに割れ、その先を繃帯《ほうたい》でグルグル巻いてあった。その三つまたを街灯の電球へおしつけ、竿を左まわりにねじると、電球がソケットからすこし抜けてもどるため、あかりが消える仕掛だった。
少年たちが、この作業のときに一番気がついたことは、共同の力の大きいということだった。
昔、毛利元就《もうりもとなり》は三本の矢を一度に折ることのむつかしいことから、協力の
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