へんな数で、わが中国東北部|駐屯軍《ちゅうとんぐん》の六倍の兵力を国境に集め、飛行機も一千台、ことに五トンという沢山《たくさん》の爆弾を積みこむ力のある重爆撃機が、数十台もこっちを睨《にら》んでいる。そしていざといえば、国境を越えて時速三百キロの速力で日本へやって来て爆弾を撒《ま》きちらした上、ゆうゆうと自国へ帰ってゆくことが出来る。実に凄《すご》いやつだ。そんな物凄いやつを遠いところから、わざわざ日本の近くにもって来ているし、軍隊をしきりに国境近くに集め、毎日のように中国東北部をおびやかしている。もう宣戦布告ぬきの戦争が始まっているようなものだ。お天気が定まってくると油断がならない。昔、蒙古《もうこ》の大軍が兵船を連ねて日本に攻めてきたときには、はからずも暴風雨に遭《あ》って、海底の藻屑《もくず》になってしまったが、今日ではお天気の調べがついているから、暴風雨などを避けるのは訳のないことだ。お天気の続くことが分かったら、いつやって来るか知れない」
「いやだなあ! お天気はもう三日も続いているのですよ。するとこれは危いのかな。ちっともそんな気はしないのだけれど……」
旗男はクルリと寝
前へ
次へ
全99ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング