はずいぶんの高度をとって飛んでいるものらしい。
するとまた直ぐに、別の伝令が靴音も高く飛んできた。
「隊長どの、警報電話であります」
「うむ」
「大宮聴音隊発警報、本隊は午前三時二十分において、北より西に向いて水平角六十九度、仰角八十度の方向に、敵機と認めらるる爆音を聴取せり。終り」
「うむ、御苦労」
計算器を合わせていたM曹長は、顔をあげて叫んだ。
「隊長どの、唯今の報告に基き計算致しますと、敵機の進行方向は東南東であります」
その声の終るか終らぬうちに、浦和の聴音隊からの警報がやって来た。M曹長は図盤の上にひろげた地図に、刻々の報告から割りだした、敵機の進路を赤鉛筆でしるしていった。
「高射砲兵員、配置につけッ」
K隊長は緊張に赭らんだ頬に、頤紐をかけた。
[#「飛行機の上昇限度と高射砲の偉力」の図(fig3517_02.png)入る]
兵員は、急速に高射砲列の側に整列した。命令一下、高射砲は一斉にグルリと旋回して砲口を真北にむきかえた。
真近い道灌山《どうかんやま》の聴音隊からも、ただいま敵機の爆音が入ったとしらせてきた。敵機は折からの闇夜を利用しいつの間にか防空監視
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