空襲下の日本
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)電灯を点《つ》けたり、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)フラフラになる程|疲労《くたび》れちまったよ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「帝都防空配置図」(fig3517_01.png)入る]
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   戦慄の日は近づく


 ――昭和×年三月、帝都郊外の若きサラリーマンの家庭――

「まあ、今日はお帰りが遅かったのネ」
「うんフラフラになる程|疲労《くたび》れちまったよ」
「やはり会社の御用でしたの」
「そうなんだ。会社は東京の電灯を点《つ》けたり、電車を動かしたりしているだろう。だから若《も》し東京が空襲されたときの用心に、軍部の方々と寄り合って、いろいろと打合わせをしたんだよ」
「空襲ですって! 空襲って、敵の飛行機のやってくることですか」
「うん」
「まあ、そんなことを、今からもう考えて置くんですの。気が早いわねエ」
「気が早かないよ。すこし遅い位いなんだ。尤《もっと》も相談は前々からやってある。『東京非常変災要務規定』などいうものが、
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