と聴音隊との中間にいるわけでしたね」
「そうだ。立川、所沢《ところざわ》、下志津《しもしづ》、それから追浜《おっぱま》というところが飛行隊だが、命令一下|直《ただ》ちに戦闘機は舞い上って前進し、そこで空中戦を行うのだ」
「その内側が、われわれ高射砲隊ですか」
「その通りだ。大東京の外廓以内に、到るところ、高射砲陣地がある。ことにこの上野公園の高射砲陣地は、もっとも帝都の中心を扼《やく》する重要なる地点だ。われ等の責任は重いぞ」
 そう云ってK中尉は、天の一角を睨んだ。漆を融かしたような皐月闇《さつきやみ》の空に、怪鳥の不気味な声でギャアギャアと聞えた。
 そこへバタバタと靴音がして、伝令兵が飛んできた。
「隊長どの、警報電話であります」
「警報かッ」中尉は鸚鵡《おうむ》がえしに叫んだ。
「大宮聴音隊発警報」
「ウム」
「本隊は午前三時十五分に於いて、北より西に向いて水平角七十二度、仰角《ぎょうかく》八十度の方向に、敵機と認めらるる爆音を聴取せり。終り」
「御苦労」
 伝令はバタバタと駈けて向うへ行った。
 聴音機は殆んど頭上を指しているわけだから、聴音機の利く距離を二十キロとして、敵機
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