の器械らしいが、いったいなんの器械かね。なんに使う器械かね」
「さあ。待ってくださいよ」
蜂矢は、ポケットからドライバーを出して器械の裏蓋《うらぶた》をあけた。中を見ると、ラジオ受信機に似た、こまかい部品器具が集まっており、赤や青や黄のエンパイヤ・クロスのさやをかぶった電線が、くも[#「くも」に傍点]の巣のように配線してあった。
「電波を出す器械のようですね。いわゆる送信機の一種らしいのですが、かんじんの真空管がぬいてあるし、電波長《でんぱちょう》を決定する、同調回路《どうちょうかいろ》のところもねじ切ってあるから、はっきりわかりませんねえ」
蜂矢は、いよいよおどろきの色を見せてそういった。
「なんだって、かんじんの真空管やら、何やらがぬいてあるというのかい。誰がそんなことをしたのだろう。やっぱり、あのあやしい男のしわざか」
検事は自問自答した。
「そうでしょうね。あの怪人物は、なかなか注意ぶかくやっていますね。ただのネズミじゃありませんね」
「そうだ。こうなると、こんな黒箱なんかに目をくれないで、彼奴《あいつ》をおいつめた方がよかったんだ。そして、みんな彼奴の註文《ちゅうもん》
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