事をなぐさめた。
「そうだ。とにかく、彼奴《あいつ》はこのへんですがたを消したんだから、どこかこの近くに巣《す》くっているのにちがいない。ああ、そうだ。怪人物がおとしていった黒箱を、ちょっとしらべてみよう。こっちへだしたまえ」
 その黒箱は、さっきから蜂矢が検事からあずかって、こわきに抱いていたのだ。それは木の箱だった。しかしかなり重いところをみると、中に金属製の何物かがはいっているにちがいない。
「どこかあくんだろうが、どうしたらいいだろうかね」
 検事は、こういうことになると、いつも手をやく方であった。そこで蜂矢のたすけをもとめる。
「さあ、どこがあくんですかな」
 蜂矢もその場にしゃがんで、黒箱をいろいろといじってみる。なかなかあかなかったけれど、蜂矢がその黒箱の板の節穴《ふしあな》に小指を入れてみたときに、きゅうに箱がばたんとはねかえり、四方の枚がはずれた。そして中から出てきたものは、銀色のうつくしい金属|光沢《こうたく》をもった箱であった。
「二重箱《にじゅうばこ》になっているんですね。なかなか用心ぶかい作りかただ」
 蜂矢は、おどろいていった。
「なるほど。そしてこれは何か
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