すことができないのです。まあ、それよりは、さっそくこれからご案内しましょう。わたしといっしょに行ってください。そして検事さんはご自分の目でごらんになり、そしてご自分の頭で、その怪事実の奥にひそむ謎をつまみ出してください」
「え、どこへ行ってなにを見ろというのかい」
「今、浅草公園にかかっている“二十世紀の新文福茶釜《しんぶんぶくちゃがま》”という見世物を見物に行くんです。これは、わたしの助手である小杉《こすぎ》少年が、わたしに知らせてくれたものです。じつは茶釜じゃなく、めし[#「めし」に傍点]たき釜の形をしているんですが、それがひょこひょこ動き出し、音楽に合わせておどったり、綱わたりもするんです。しかもインチキではないらしい……」
「インチキにきまっているよ。きみもばかだねえ」
「いや、ところがわたしのしらべたところは、インチキでないのです。わたしは気がついたのです。あの新文福茶釜こそ、金属Qそのものが、茶釜にばけているのかもしれません」
「なに、金属Qだって。よし、すぐ出かけよう。そこへつれていってくれたまえ」
検事は立ちあがって帽子をつかんだ。
観音堂《かんのんどう》う
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