蜂矢は、この三つの条件をそなえた金属Qが実在すると、かりに信じ、これをレンズと見なし、そのレンズを通してこれまでの怪事件を、見なおしたのであった。そのけっか、長戸検事のところへ出むいて、もう一度おとぎばなしをする必要を感じたのだ。
「検事さんもごらんになった、あの第二研究室の中の棚に並んでいた、へんな試作物《しさくぶつ》のことですがね。たしか『骸骨《がいこつ》の一』から『骸骨の八』までの箱がならんでいたそうですが、あの中にあったへんな試作物こそ、金属Qの兄弟だったんじゃないですかね」
「ふーン」
 検事は、天じょうのすみを見あげて、ため息ともうなり声ともつかない声を発した。
 ――そうだ。たしかにじぶんは「骸骨の一」とか「骸骨の二」とか札のついていたものを見物《けんぶつ》した。それは、すこぶるかんたんな立体幾何学的《りったいきかがくてき》な模型《もけい》のような形をしていた。
 大小三つの輪が、からまりあっているような、そしてかごのできそこないみたいにも見えるものがあった。あれがたしか「骸骨の一」であった。
 それから、三本の直線の棒が平行にならんでいて、そのあいだに助骨《ろっこつ
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