るものがどんなものやら、そしてどんな性質をもっているものやら、そこらがはっきり書いてない。そのうえに、博士の書いてある説明は現代において、普通に知られている理学《りがく》の範囲《はんい》をかなりとび出していて、解《かい》することがむずかしい。正しいのか、まちがっているのか、それさえ判定がつきかねる。
 だが、蜂矢十六は、そういうわけのわからないものの中に、自分も共にわからないでころがっているのは、おろかであると思った。じぶんは探偵だ。金属Qの理学に通じ、その論文を完成するのは、世の学者たちにまかせておけばいい。じぶんは身をもって金属Qという、怪《あや》しき物件《ぶっけん》にぶつかり、それを手の中におさえてしまえば、それでいいのであった。そしてそれはいそがねばならない。
 そこで蜂矢は、すこぶる大胆《だいたん》に、つぎの仮定を考えた。
 一、金属Qという怪物件《かいぶっけん》が実在《じつざい》する。
 二、金属Qは、人造《じんぞう》されたものである(針目博士だけが、それを創造《そうぞう》することができるらしい)。
 三、金属Qは、生命《せいめい》と、思考力《しこうりょく》とを持っている。
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