はその釜であった。いったいどんな秘密を、この釜が持っているのであろうか。


   金属Qの謎


「どうかね。なにか手がかりをつかんだかね」
 長戸検事は、役所へたずねてきた蜂矢十六探偵の顔を見ると、目をすばしこく走らせてそういった。
「あなたのお気に召さない、例の方面をほじくっているんですがね」
 と、蜂矢探偵は検事の机の横においてあるいす[#「いす」に傍点]に腰をおろして、にやりと笑った。
「ははあ、また“金属Q”の怪談《かいだん》か。きみも若いくせにおばけばなしにこるなんて、おかしいよ。良くいっても、きみがおとぎばなしをひとつ作ったというにすぎない」
 検事は、いまいましそうに、エンピツのおしり[#「おしり」に傍点]で前にひろげてある書類をぽんぽんとたたく。
 金属Qとは? それは本篇のはじめにご紹介したが、針目博士の日記と研究ノートのなかから蜂矢探偵がひろいあげた謎にみちた物件であった。
 金属Q!
 それはほんとうに実在するのか。それとも針目博士が頭の中にえがいていた夢にすぎないのかそのどっちか、よくはわからなかった。第一、博士の書き残してあるものを読みあさっても、金属Qな
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