下におかれた釜は、しばらくすると、またかたことと、からだをゆすぶり出した。
「ふーン、ふしぎだなあ」
 雨谷はおどろいて天眼鏡《てんがんきょう》を出すと、動く釜をしげしげながめた。かれはしきりに頭をふった。釜は元気づいてカニのようにたたみ[#「たたみ」に傍点]の上をはいまわる。
 雨谷君は、とつぜん天眼鏡《てんがんきょう》をひっこめてぽんと膝をうった。
「うふン。これはすばらしい金もうけが見つかったぞ。エジプト手相よりは、ずっともうかるにちがいない。二十世紀の奇蹟|今様文福茶釜《いまようぶんぶくちゃがま》――ではない文福釜《ぶんぶくがま》。……文福釜では弱い。そうだ文福茶釜二世あらわる。さあいらっしゃい。見料は見てからでいいよ、見ないは末代《まつだい》までのはじ[#「はじ」に傍点]だ。得心《とくしん》のいくまでゆっくり見て、見料はたった三十円だ。写真撮影、写生、録音、なにしてもようござんすよ。いらっしゃい、いらっしゃい、というのはどうだ」
 大学生雨谷君は、すっかり香具師《やし》になったつもりである。
 さあ、彼の大金もうけの計画は、うまく成功するだろうか。それにしてもふしぎなの
前へ 次へ
全174ページ中70ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング