ばっているごはんをもどした。そしてそのお釜を持って、壁のところへ行きそこへおこうとして、またびっくり。
「おやおや、茶わんとさらがこわれている。誰がこわしたんだろう。また買いなおすと、三十円ぐらいかかる。たまらないや」
 そういいながら、雨谷はお釜をはじめの場所へおき、重いふた[#「ふた」に傍点]をかぶせた。そして寝具をちゃんとしきなおした。まくら[#「まくら」に傍点]もおいた。
「さあ、ねるとするか」
 彼は上着のボタンに手をかけた。
 そのときであった。がたんと音がした。釜のふた[#「ふた」に傍点]が下へすべり落ちたのである。
「おや……」
 彼は目をまるくした。ふしぎなことを発見したからである。ふた[#「ふた」に傍点]を落としたお釜が、ことことン、ことことンと左右にからだをふりながら、前へはいだしてくるではないか。
 雨谷君はびっくりしたが、彼はもともと勇気があったから、立ちあがってお釜をつかみあげた。そして中を見たり、ひっくりかえしておしり[#「おしり」に傍点]を見たり、こーンとたたいたりして、お釜をしらべた。
 異常はなかったし、中に動物がはいっていない。彼はお釜を下においた
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