について、大いに気にしなければならぬことがあるのであるが、ここにはふれないでおく、それはいずれ先へ行ってから、いやでもむきになって掘りかえさなければならない時がくるのであるから。
 ただ、ここにはその文章の最後のところに書いてある一文について、読者の注意をうながしておきたいのだ。
 すなわち、こうである。
[#ここから2字下げ]
(一月十日、金属Qを創造《そうぞう》する見込《みこ》みのつきたる日しるす)
[#ここで字下げ終わり]
 とある。
 おかしいとは思われないか。これまでずっと細胞分子の問題や、それに関連しての生命誕生のことなどばかりを取りあげていた針目博士が、こんどは急にがらりと目先をかえて、金属の製造研究に没頭していることである。
 金属製造――と書いては、いけないかもしれない。博士は“金属Qを創造”としたためている。製造と創造とは、なるほどすこしく意味がちがう。しかし創造ということには製造することがふくまれているのだ。はじめて製造することが創造なのである。してみれば、ぞくっぽく金属製造といってもさしつかえないであろう。
 いや、金属というものは、精錬《せいれん》され、あるい
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