を駆使《くし》している。思うに、この二つの専門語を知るためには、これよりもまえに書いた、彼の他の論文を読破《どくは》しなければならないのであろう。
それはともかく、かれの研究は生命誕生の可能性にまで達していると思われる。これはこれまでの生物学者も医学者も、まったくふれることのできなかった難問題である。それを二十歳を越えたばかりの白面《はくめん》の青年学徒が、みごとに手玉にとっているのであるから、なんといってよいか、じつに原子力行使《げんしりょくこうし》につぐ劃期的な文明開拓だといわなければならない。もっとも、世の多くの頑迷《がんめい》な学者たちは、にわかにこの青年学徒のしめすところの結論を信用しないであろうけれど……。そして読者諸君はこれからくりひろげられる物語の事実により、はたしてかれの研究が本ものか、それとも欠陥《けっかん》があるかを判定されればよいのである。
さてここで、さきにかかげた博士の日記ふうの随筆にもどるが、その内容は、さほど奇抜《きばつ》すぎるというものではない。あそこに述べられたような感じは、われわれとても、ふだんふと心の中にいだくことがある。
じつは、右の内容
前へ
次へ
全174ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング