ふた」に傍点]がだんだんずれて、やがて大きな音をたてて下に落ち、茶わんとさら[#「さら」に傍点]をこわしてしまった。
雨谷君は、その音におどろいたか、ぱっとはね起きたが、お釜の方をちょっと見ただけでまたドーンと横に倒れて、ぐうぐうと眠ってしまった。
大金《おおがね》もうけの種《たね》
お釜は、ことこと、ことこと、と左右にからだをゆすぶっている。
お釜の中にネズミがはいっているわけではなかった。またお釜のかげで、ネコがからだを動かしているわけでもなかった。お釜は、ひとりでからだをゆすぶっているのだった。
それは運動力学の法則に反しているように思われた。他からの力がくわえられないで、金属製の釜が動くはずはなかった。
それとも電気の力か、磁気《じき》の力が、そのお釜にはたらいているのであろうか。いやいや、そんな仕掛けは、この部屋の中に見あたらない。
動くはずはないのに、お釜は実際ことことからだをゆすぶっている。
動いているのがほんとうであるかぎり、お釜には力がはたらいているのだと思わなくてはならない。その力はいったいどこにはたらいており、そしてその力の源《みなもと
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