だ。それはまわりの壁が、ひじょうにつよかったせいで、爆発と同時に、すべてのものは弱い屋根をうちぬいて、高く天空《てんくう》へ吹きあげられ、となりの部屋へは、害がおよばなかったわけだ。
 焼跡は一週間もかかって、いろいろ念入りにしらべられた。
 だが、この室内にあったものは、すべてもとの形をとどめず、灰みたいなものと化《か》していた。よほどすごい爆発を起こし、圧力も熱もかなり出たらしい。なにしろ鋼鉄《こうてつ》の棒《ぼう》ひとつ残っていないありさまだった。
 捜査は、とくに針目博士の安否《あんぴ》に重点《じゅうてん》をおいておこなわれたが、前にのべたように博士のすがたは発見できなかった。また人骨《じんこつ》の一片《いっぺん》すら見あたらなかった。
 もしや博士は地下室へでものがれたのではないかと、焼跡《やけあと》を残りなく二メートルばかり掘ってみたが、出てくるものは灰と土ばかりで、なんの手がかりもなかった。
「どうもこのようすでは、博士は爆発とともにガス体《たい》となり、屋根をぬけて空中へふきあげられちまったんじゃないかね」
 川内警部は、おしいところで重大容疑者《じゅうだいようぎしゃ》
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