られなかった。いや、例外がある。針目博士だけは、足をぶるぶるふるわせながらも立っていた。
「でよう。この部屋からでよう」
長戸検事が叫んだ。すると川内警部ははっていって戸口を押した。戸口はびくともしなかった。
それを博士が見たものと見え、とぶようにかけて来て、ハンドルをまわして戸をあけると、五人はあらそうようにして、外へとび出した。
五人の係官が出てしまうと、戸はもとのようにしまった。博士がしめたのである。
検事たちは、まだ二つのドアを開かねばならなかった。文字どおり必死で、ようやくドアを開いて、第一研究室へ出ることができた。一同の足は、そこでもとまらなかった。あきれ顔の人たちや他の警官の前をすりぬけて、一同は庭へころげ出た。
そしてほっと一息ついたおりしも、天地もくずれるような音がして、目の前にものすごい火柱《ひばしら》が立った。第二研究室が、大爆発を起こしたのだった。なにゆえの爆発ぞ。針目博士はどうしたであろうか。
事件|迷宮《めいきゅう》に入る
第二研究室の爆発のあと、針目博士のすがたを見た者がない。
爆発による被害は、さいわいにも第二研究室だけですん
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