。なにか起こったのですか」
 検事が博士のそばへ寄って、低い声でいった。
「大切にしていたものが、なくなりました。いったいどうしたのか、わけがわからない……」
 すると川内警部がやってきて、博士の腕をむずとつかんだ。
「きみ、ごまかそうとしたって、そうはいかないよ。あと骸骨《がいこつ》の戸《と》は五、六、七、八と四つあるじゃないか。早く開いて見せなさい」
「あ、そんな大きな声を出しては――」
「これはわしの地声《じごえ》だ。どんなでかい声を出そうと、きみからさしずはうけない」
 警部がどなるたびに、配電盤の計器の針がはげしく左右にゆれた。
 そのときだった。室内にいた者はきゅうにひどい頭痛《ずつう》にみまわれた。誰もかれも、ひたいに手をあてて顔をしかめた。
 それと同時に、骸骨のしるしのつけてあった陳列棚から、すーっと黒い煙が立ちのぼった。しかし「骸骨の四」のところからは出なかった。
「もう、いけない。危険だ。みなさん、外へ出てください」
 博士が叫んで、さっき一同のはいって来た戸口の方をゆびさした。しかしその戸は、しっかりしまっていた。
「どうしたんです、針目博士」
 検事がおどろい
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