まで観察するよゆうがなく、ただふしぎな頭のない大きなガマがガラス槽の中で、あばれまわっているのにびっくりしたのであった。
検事は、おどろきの目を、つぎつぎのガラス槽に走らせた。その結果、かれのおどろきはますますはげしくなるばかりだった。かれはもうひとつのガラス槽の中において、たしかに木製《もくせい》おもちゃにちがいない人形が、やはり透明な小箱を背おってあるきまわっているのを見た。
それはゼンマイ仕掛けの人形とはちがい、どう見ても昆虫《こんちゅう》のような生きものに思えた。
つぎのガラス槽の中では、やはり頭のないネズミが、透明の小箱を背おって、人間のように直立し、のそりのそりと中を散歩しているのを見た。またそのお隣のガラス槽《そう》の中では、一本足のコマが、ゆるくまわりながら、トカゲのように、あっちへふらふら、こっちへちょろちょろと走りまわっているのを見た。なんという奇怪な生物の展覧会場であろう。
いや、展覧会場ではない、これは針目博士が、他人にのぞかせることをきらっている密室のひとつなのであるから、極秘《ごくひ》の生きている標本室《ひょうほんしつ》といった方がいいのだろう。
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