めた。そしていそいで部下のあとを追って中へはいった。
「うむ」
 検事はうなった。あやうく大きな叫び声が出そうになったのを、一生けんめいに、のどから下へおしこんだ。
 かれらはいったいなにを見たのであろうか。
 それはなんともいいようのない奇妙な光景であった。窓のないこの部屋の四つの壁は、隣室《りんしつ》につうずる二つのドアをのぞいたほかは、ぜんぶが横に長い棚《たな》になっていた。下は床のすこし上からはじまって、上は高い天じょうにまでとどいて、ぜんぶで十段いじょうになろう。
 そしてこの棚の上に、厚いガラスでできた角型《かくがた》のガラス槽《そう》が、一定のあいだをおいてずらりとならんでいるのだったが、その数は、すくなくとも四、五百個はあり、壮観《そうかん》だった。
 しかもこのガラス槽の中には、それぞれ活発に動いている生物がはいっていた。検事が最初に目をとどめたガラス槽の中には、頭のない大きなガマが、ごそごそはいまわっていた。もっともそのガマは、背中にマッチ箱ぐらいの大きさの、透明な箱を背おっていた。その箱の中には、指さきほどの灰白色のぐにゃぐにゃしたものがはいっていたが、検事はそこ
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