ょう裏をはいまわってさがさせていただきたい」
「天じょう裏はいいが、ぼくの研究室をさがすことはおことわりする」
「今のお約束のことばとちがいますね。それはこまる。そしてあなたに不利ですぞ」
「……」
「研究室をさがすために強権《きょうけん》を使うこともできますが、なるべくならば――」
「よろしい。案内しましょう。しかしはじめにことわっておくが、後できみたちが後悔したって知りませんよ」
博士は何事かを考え、気味のわるいことばをはなった。さて博士の研究室の中に、何があるのか。
待っていた奇々怪々《ききかいかい》
係官の一行は、うすぐらい廊下を奥の方へと進んでいった。
先頭には、かなりきげんのわるそうな針目博士が肩をゆすぶって歩いている。そのすぐうしろに右頬を斬られ大きなガーゼをあてて、ばんそうこうで十字にとめた田口巡査がついていく。もしも博士が逃げだすようすを見せたら、そのときはすぐうしろからとびついて、その場にねじ伏《ふ》せる覚悟をしている田口巡査だった。
それから少し歩幅《ほはば》をおいて、長戸検事を先に、残り係官一行が五、六名つきしたがっている。
検事の顔色は
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