」
「お待ちなさい」
検事は手を前に出して博士を引き止めた。
「お三根さんがそのような兇器《きょうき》で殺されたばかりでなく、きょうここへきたわれわれの仲間がふたりまで、その同じ凶器によって重傷を負《お》っているのです。これでもおとぎばなしでしょうか」
「本当ですか」
博士は、はじめて真剣な顔つきになった。
「本当ですとも。川内警部と田口巡査のあの傷を見てやってください」
「ああなるほど。それでその矢はどこにあるんですか」
「それがあるなら、事件はかんたんになります。それがどこにも見えないから、われわれは苦労しているのです。あなたにうかがえば、その恐るべき兇器のからくり[#「からくり」に傍点]がわかるだろうと思って、おたずねしているわけです」
「そんなことをぼくに聞いてもわかる道理《どうり》がない。捜査するのはあなたたちの仕事でしょう。徹底的にさがしたらいいでしょう。かまいませんから、邸内どこでもおさがしなさい」
「そういってくださると、まことにありがたいですが、どうぞそれをお忘れなく――」
と検事はほくそ笑《え》んで、
「では、あなたの実験室も拝見したいですし、それからこの天じ
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