みても、そのはげしさがわかる。事件後|焼跡《やけあと》に立った一同は、カッパのような顔色にならない者はなかった。
 ふしぎにも針目博士はすがたをあらわさなかった(いや、その後も博士は引き続いて、すがたをあらわさないのだ)。前日より、いささか考えるところがあって、ひそかにこの邸のまわりに私服警官数名を配置し、博士の行動を監視させておいた。ところが、かれら監視当直の者の話では博士はずっと邸内にとどまっていたらしく、けっして外出しなかったそうである。
「蜂矢君。きみはどうしてこんどの爆発を予知したのかね」
 検事は、うしろをふりかえって、生命《せいめい》を拾うきっかけを作ってくれた探偵にたずねた。
「わかりませんねえ。ただ、さっきはきゅうに気持が悪くなったんです。いまはなんともありません。これは一種の第六感ではないでしょうか」
「きみの第六感だとね。なるほど、そうかもしれない」
 いつもならまっこうから、ひやかす長戸検事が、笑いもせず、そういってうなずいた。
「とにかくきみもぼくも、きのう博士をうさんくさい人物とにらんでいたことは、意見一致のようだね。そうだろう」
「そうです。かれこそ、怪金
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