のうとおなじ顔ぶれの長戸検事一行が、針目博士邸《はりめはくしてい》へ向かった。もちろんその中に蜂矢探偵もまじっていた。その蜂矢は、いつになく元気がなかった。
「おい、蜂矢君。どうしたんだ。元気をだすという約束だったじゃないか」
気になるとみえ、長戸検事は蜂矢のそばへ行って肩を抱えた。
蜂矢は苦笑した。
「どうもきょうは調子が出ないのです。ぼくだけ抜けさせてもらえませんか」
「それは困るね。ここまでいっしょにきたのに、いまきみに抜けられては、おおいに困るよ」
と、検事はいって、蜂矢の顔をのぞきこんだが、蜂矢はほんとうにすぐれない顔色をしているので、検事はきゅうに心配になって、
「うむ、蜂矢君。抜けていいよ。早く帰って寝たまえ。あとから医務官《いむかん》を君の家へさし向けてあげる」
といって、蜂矢が一行とはなれることをゆるした。そこで蜂矢はとちゅうからひきかえした。
ところが、検事一行が博士の門の手前、百メートルばかりのところまで近づいたとき、
「おーい、おーい」
と後から呼ぶ者があった。一同が振り返ってみると、いがいにも蜂矢が追いかけてくるのだった。
「どうした、蜂矢君」
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