か」
博士は、はっとしたようすだった。きゅうにふきげんになった。そして腕時計を見た。
「おお、もう約束の十五分間は過ぎている。会見は終りにします。これ以上、なにもしゃべれません。さあみなさん、出ていってもらいましょう。はじめからの約束ですから」
だんだんと語勢《ごせい》を強くして、博士は手をあげ、戸口《とぐち》を指した。
「わたしのいまの質問は、いちばん重要なものですから、きょうの会見のさいごに、それだけはお答えください」
検事は、くいさがる。
「おたがいに約束は守りましょう。さあ、いそいで帰ってください」
と、博士は、ますますこわい顔つきになって、検事をにらみすえた。
「まあ、もうしばらく待ってください。博士、もしあなたがこの答えをなさらないと、あなたは不利な立場におかれますが、かまいませんか」
「答えることはしない。何者といえども、わしの仕事をじゃますることをゆるさない。じゃまをする者があれば、わしは実力を持って容赦《ようしゃ》なくその者を、外へたたき出すばかりだ」
博士の全身に、気味のわるい身ぶるいが起こった。
蜂矢十六は、このとき検事のうしろに、ぴたりと寄りそって、
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