のように興奮したり、あわてたりするのは、あたりまえだ。そうだろう」
「ごもっともなご意見です」
「かれはね、Qとして生命をえて、うれしくてならない。第二研究室の中で、ひとりぴんぴんとびまわっていたのだ。このときわしは二つの失策をしている。一つは、Qがそんなに活動的になっていることを知らなかったんだ。まだまだ、クモがはうぐらいのものだと思っていた。ところが実際は、Qは三次元空間《さんじげんくうかん》を音よりも早くとびまわることができたんだ」
「なるほどなあ」
「よろしいか。それから二つには、わしはうっかりしていて、かれQがかぎ[#「かぎ」に傍点]穴から抜け出せるほど小さくて細長いからだを持っていることを考えずにいたんだ。だから、ある夜、Qはかぎ穴から外に広い空間があることに気がつき、かぎ穴から抜け出したのだ。つぎの室にはわしがいたが、ちょうど文献《ぶんけん》を読むことに夢中になっていたので、Qはそのうしろを抜けて、戸のすき間から廊下へ抜け出した。わかるだろう」
「ええ、よくわかりますとも」
「それからお三根《みね》さんの部屋へはいりこんだ。めずらしい部屋なので、Qはよろこんで踊りまわって
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