んめいにさがしてあるいた形跡がある。そこにいる蜂矢君のところへも、Qはおしかけたようだ。そうではなかったかね、蜂矢十六先生」
 さっきから蜂矢十六は、検事と博士を底辺《ていへん》の二頂点《にちょうてん》とする等辺三角形の頂点の位置に腰をかけて、からだをかたくして聞いていたが、とつぜん博士に呼びかけられて、はっとわれにかえった。
「ああ、そんなこともありました。博士のおっしゃるとおりです」
 博士はまんぞくそうにうなずいた。
「なぜ、Qはここから逃げ出したのでしょうか、ここにいれば一等安全でもあり、おもしろい目にもあえるし、博士からもかわいがられたでしょうに。どうしてでしょうか」
 と、長戸検事は、博士が息つくひまもないほど、すぐさま質問の矢をはなった。もうあと一分間ばかりで、約束の時間がきれる。
「それはきみ、すこしちがっているよ。Qはここにおられなくなったんだ。かれは殺人をやって、ひどく興奮したんだ。その殺人は、かれが計画したものではなく、ぐうぜん、若い女を殺してしまったので、かれの興奮は二重になった。そこへ警官がのりこんでくるし、かれはいよいよあわてた、かれは生きものなんだから、そ
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