うか、くわしいことは博士にたずねてください。しかしですね、博士はいま、かなり興奮しているようですから、腹をたてさせないように気をつけたがいいですよ」
 と、かれとしての説明を終った。
 そこで針目博士と長戸検事の会見となったわけであるが、検事はよく蜂矢の忠告を守って、ひきつれてきた部下たちをしずかに入口にならばせておくだけで、捜査活動は自分ひとりでやることにした。
「ずいぶん、しばらくお目にかかりませんでしたなあ、針目博士」
「そうでした、そうでした。で、きょうは何用あって、ここへきたのですか」
 博士はすぐ質問の矢をはなった。
「それは、あなたにお目にかかって、怪人Q事件について、最初からもう一度、説明をしていただくためです。われわれは正直に告白しますが、これまでの捜査はみんな失敗でありました。それに気がついたので、いままでの努力を惜しいが捨てまして、はじめから出直すことにきめたのです。おいそがしいでしょうが、もう一度われわれの相手になっていただきたい」
 と、長戸検事は、むきだしにのべて、博士にたのみこんだ。
「わたしはいそがしいんで、頭のわるい検察当局の尻《しり》ぬぐいなんかして
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