いうと、後《あと》からあらわれた博士の方がいっそう青い顔をしている。
 ところが顔いがいのところを見ると、だいぶんちがいがあった。蜂矢探偵を壁のところにまで追いつめた針目博士の方は、いやに高いカラーをつけて、くびのところが窮屈《きゅうくつ》そうに見える。また頭部に繃帯《ほうたい》をしている、その上に帽子をかぶっている。
 これにたいして、あとから現われた針目博士の方は無帽《むぼう》である。頭には繃帯を巻いていない。
 服装は、蜂矢探偵を追いつめている針目博士のほうは、黒いラシャの古風《こふう》な三つ|揃《ぞろ》いの背広をきちんと身につけているのに対し、あとからあらわれた針目博士の方は、よごれたカーキー色の労働服をつけていた。服はきれいではないが、小わきにりっぱな機銃《きじゅう》みたいなものを抱えている。
「動くと、これをつかうぞ。すると、金属はとろとろと溶《と》けて崩壊《ほうかい》する」
 あとからあらわれた針目博士が、はやくちに、だがよくわかるはっきりしたことばでいった。
「待て、それを使うな。わしは抵抗しない」
 始めからいた針目博士が、苦しそうな声で押しとどめた。もはや蜂矢探偵の
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