るのはやめて、お巡《まわ》りさんにきてもらったうえでのことにしようや」
男の貞造が、そういって尻《しり》ごみをしたので、お松とおしげもきゅうに、こわさが増《ま》して、もう力を出す気がなくなった。
そこでもう一度、奥の主人にことわったうえ、おしげが交番へ警官を呼びにいった。
やがて若い警官の田口さんというのがきてくれた。そこでこんどは四人が力をあわせて、ドアにぶつかった。
四、五回ぶつかると、錠《じょう》がこわれて、重いドアは風を起こして、さっと内側に開いた。
「ああッ……」
「こわい!」
ねまきを着たお三根が、入口からすぐ見える部屋のまん中に、あけにそまって倒れていた。
その部屋は、あとでたたみの間になおした部屋であったが、広さは十二畳もあった。お三根の寝床は左の壁ぎわにしいてあったが、お三根の死体はその中にはなく、たたみの上にあったのだ。
寝床は、この中で寝ていたお三根が何かの理由があって、ふとんをはねのけてはいだしたものと察せられた。
お三根は、左の頸動脈《けいどうみゃく》を切られたのが致命傷《ちめいしょう》であることがわかった。なお、お三根の両手両腕と顔から腕へか
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