う》という男と、お松とおしげというふたりのお手伝いさんの三人が、このドアにぶつかったのだ。しかしなれない仕事のこととて、はじめはうまくいかず、からだが痛くなるばかりなので一息ついて休んだ。
「だめだねえ」
「だって、錠《じょう》をこわすのはなんだかもったいないようでね、力がはいらないよ」
「それどころじゃない。早くあけてみないととんだことになるぞ。お三根どんは死んでいるんじゃないかね」
「まさかね。あんな元気のいい人が、心臓まひでもあるまいよ」
「さあ、もう一度力を出して、やってしまおう。こんどは何としてでも錠をこわしてしまうんだよ」
三人は、ふたたびドアの方へよってきて身がまえた。
と、そのとき部屋の中で、がちゃんとガラスがこわれるような音がした。
「あれッ、中で音がしたよ」
「お三根さん、起きているんだよ。ひとが悪いわね」
そこで彼らは、かわるがわるお三根の名を呼んだ。だが、そのこたえはなかった。
「誰か中にいるんだよ。おお、こわい」
「ネズミじゃないかしら」
「ネズミがあんな大きな音をたてて、ガラスをこわすもんですか」
「とにかく、これはただごとじゃないよ。わしらだけであけ
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