》な幾何模型《きかもけい》みたいなものを見すえた。
あの爆発のおこる前「骸骨《がいこつ》の四」だけが箱の中になかった。それで博士があわてだした。そのことを、いま蜂矢探偵は思いだした。
博士はだまっている。気味のわるいほどだまっている。蜂矢は「これは骸骨の四ですか」とたずねようとして博士の顔を見ておどろいた。なぜなら博士の顔色は、人形のように白かった。生きている人の顔色とは思われなかったのである。
「針目博士。どうしました」
と、蜂矢がさけんだ。
そのとき博士は、いそいで手をひっこめた。そして手のひらにのせていたものを、すばやくもとのとおり頭蓋骨の中におしこんで、両手で頭の形をなおした。それから深呼吸を三つ四つした。すると博士の顔に、赤い血の色がもどってきた。死人の色は消えた。
博士は、そのあとも、しばらく苦しそうに肩で息をしていたが、やがて以前のとおりの態度にかえって、蜂矢をからかうような調子で話しかけた。
「どうです。お気にめしましたかね。ところがこっちは、どえらい苦しみさ。ああ、きみをよろこばすことの、なんとむずかしいことよ」
蜂矢は、このときには、ふだんの落ちつきはら
前へ
次へ
全174ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング