」
そういってから博士は、横を向いて、にたりと気味のわるい笑いを頬のあたりに浮かべた。
「じゃあ、おりますよ」
「さあ、早くおりてきたまえ」
蜂矢は、穴へおりた。
だがかれはどうしたわけか、その前に穴の上へ、ぽんと手帳をほうりあげた。なぜ手帳を捨てたのであろうか。
それと同時に、木かげに少年の二つの目が光った。小杉二郎《こすぎじろう》少年の目だった。
意外な工場
「早くおりてこないと、きみの相手にはなってやらないぞ。わたしにことわりもなく、こんな穴を掘って、けしからん奴だ」
異様《いよう》な姿の針目博士は、ごきげんがはなはだよろしくない。
もうすこし蜂矢探偵が穴の上でぐずぐずしていたら、博士はほんとうに怒って、ずんずん中へはいってしまったかもしれない。
ちょうどきわどいところで、蜂矢は穴の中へとびこんで、博士のそばに、どすんとしりもち[#「しりもち」に傍点]をついた。
「お待たせして、すみません。なにしろ、こんなところに地下道《ちかどう》があるなんて、きみのわるいことです。つい、尻《しり》ごみしまして、先生に腹を立たせて、あいすみません」
蜂矢は、そういっ
前へ
次へ
全174ページ中133ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング