《さるた》」と刺繍《ししゅう》したネームが縫《ぬ》いつけてあるだけであった。職業もはっきりしないが、からだはがんじょうであるけれど、農業のほうではなく、手の指や頭部《とうぶ》の発達を見ても、文筆労働者《ぶんぴつろうどうしゃ》でもなく、所持品から考えても商人ではない。けっきょく、わりあい財産があって、のんきに暮らしている人ではあるまいかと察《さっ》せられた。そして東京の人ではなく、地方から上野駅でおりたばかりのところを、やられたのであろうと思われた。
そのうちに、地方から、「猿田なにがし」という人物の捜査願《そうさねがい》が出てくるであろう。そうしたらその身分もあきらかになる。それを当局は待つことにして、「猿田」の死体の方は、ひきつづきげんじゅうに捜査をすすめていたのである。
だが、死体の行方は、いつまでたっても知れなかった。
蜂矢探偵《はちやたんてい》の決心
蜂矢探偵《はちやたんてい》は、ようやくからだがあいたので、ひさしぶりに、怪金属Qの事件の方にかかれることとなった。
探偵は、カーキー色の服を着、シャベルとつるはし[#「つるはし」に傍点]とをかついで、針目博士
前へ
次へ
全174ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング