邸《はりめはくしてい》へ行った。
博士邸は、あの爆発事件で、第二研究室が跡かたなくとんでしまって以来、住む人は留守番のほかに、検察庁から警官が詰めていたが、その人々もだんだんにへり、最後はただのひとりとなったが、今はそのひとりも常に詰めかけてはいず、三日に一度ぐらい、巡回《じゅんかい》にちょっと寄ってみるくらいだった。
警戒の方も、このくらいかんたんになっていることゆえ、世間《せけん》も、この事件をもはやわすれかけていた。
はじめ事件の捜査《そうさ》の指揮《しき》をとっていた長戸検事《ながとけんじ》は、もちろん、この事件をわすれてはいなかった。ひそかに毎日毎夜、頭をひねるのがれいになっていた。しかし表面にあらわれたところは、検事はやはりこの事件をわすれているように見えた。それは、この事件の捜査を蜂矢探偵に肩がわりをしたので、検事は任務から解放されたのだと、みんなはそう思っていた。
さて、蜂矢探偵のきょうのいでたちや、肩にかついだ道具は、なにを語るであろうか。
かれは、これまで針目博士邸につぎつぎに起こった怪事件を、くりかえし考えた。そのけっか、結論にたっすることができなかった
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