「とうとう自分でお陀仏《だぶつ》になったか」
「あんがい、かんたんな最期《さいご》をとげたじゃないか」
「大事なところを弾丸《たま》にうちぬかれたのだろう」
怪魔のからだは、ばらばらになっていた。もちろんこれはマネキン人形の手足や胴中《どうなか》や首であるから、そのはずである。
長戸検事がかけつけ、怪魔のばらばらになったからだを念入《ねんい》りにしらべた。
「はてな。なんにもない」
「検事さん、あれがありませんか」
「おお、蜂矢君」
と検事はすこしおくれてかけつけた蜂矢をふりかえって、
「あれが見えないよ。人形の首はこのとおりあるが、きみがいったようなやかん[#「やかん」に傍点]のふたみたいなものは見えない」
「もっと徹底的《てっていてき》にしらべましょう。しかしあれは怪力《かいりき》を持っていて、危険きわまりないものですから、ぴかりと光ってあらわれたら、すぐ警官隊はそれをたたき伏せなければ、あぶないですよ」
「よろしい」
蜂矢探偵は念入りにしらべた。
だが、やっぱりこわれたマネキン人形のばらばらになった部分のほかに何もなかった。
「あるはずなんだがなあ」
蜂矢は、首をか
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